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2024.01.17
Formlabs材料選定ガイド:3Dプリントの材料はどう選ぶ?


45種超のFormlabs製材料から最適な材料を選ぶ
Formlabsは3Dプリンタメーカーでありながら、3Dプリント用材料のメーカーでもあります。2023年11月時点で45種超の材料がご利用いただけ、各材料の特徴に応じて幅広い要件に適用できる点もFormlabs製品をお選びいただく際の大きなメリットになっています。
それぞれの材料が高機能で、他社製材料以上の強度、剛性、靭性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性などを高水準で備え、特許技術による100%純シリコン材料や4Nグレードの工業用セラミック(アルミナセラミックス)、そして医療グレードの生体適合性材料にも豊富な種類があり、時には「自分の作りたいものに合った材料を選ぶ」となると迷ってしまう方もいらっしゃいます。
本記事では、多くのお客様が材料選定の際に指標とされる「高強度」「高耐熱」「ゴムライク」など物性ごとに材料をご紹介し、更に金属と樹脂の特性の違い等に起因する誤解されがちな点を整理して皆さまにより良くFormlabsの3Dプリント製品をご活用いただくヒントをご提供します。また、記事末尾には質問に答えていけば最適と思われる材料を提案する材料選定支援ツールもご紹介いたします。


Formlabs光造形製品総合カタログ
本総合カタログでは、FormlabsのSLA光造形方式3Dプリント製品、極高精度を実現する特許技術LFS(Low Force Stereolithography™)技術の解説、各レジンの一括比較と詳細、使い方ガイド等光造形の情報を総合的にご紹介しています。
Formlabs デスクトップ光造形3Dプリンタ
Form 3+ / Form 3B+デモ動画
金属と樹脂の違いと2種に大別される樹脂の種類


Formlabsでは、強度、剛性、靭性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性など各材料特性を高水準で備えた高機能材料が利用できる。
押さえておくべき金属と樹脂の主な違い①
まず1つ目は、材料選定に限らず製品設計、特に強度計算に関わる違いです。一般的に金属は、合金であってもその機械的特性は非常に安定しており、例えばシート状の材料の端から端までがすべて同等の特性を備えていると考えられています。一方で、3Dプリント用材料に限らず樹脂の一般的な特徴として、よく「樹脂は練りもの」と言われるように多数の化学物質を混ぜ合わせて狙った材料特性を発揮できるよう調合して作られます。そのため、金属と比較すると材料の機械的特性にはばらつきが発生しやすく、シート状の材料でも端から端まですべて同じ特性を備えているとは限りません。もちろん特性のばらつきは大きなものではありませんが、製品設計を行う際の注意点として「その材料特性の限界値ギリギリで使用する」という使用方法にはリスクが伴います。上述のように僅かであったとしても材料特性にはばらつきがあるためです。
金属材料使用時に、その強度や硬さの限界を把握してギリギリ耐えられる地点で使用するという考え方には、強度が高く硬い材料になるほどコストが上がってしまうという点が理由となっているケースも多く見受けられます。当然構造部など安全に直接関係する箇所の設計にこの考え方は適用されないまでも、安全バッファーを設けずに設計を行う場合はその部品や材料の挙動が完全に把握、あるいは管理できる場合に限られるかと思います。樹脂材料の場合は、強度や硬さ、耐熱性などがより高い材料でもコストに大きな差が無いケースもあります。また、既に安定した状態の材料を加工する切削や圧造等とは違い、3Dプリントでは材料が安定する前に必要な形状を造形し、形ができた後に安定させることとなります。そのためユーザー側の作業によっても寸法精度や強度等の特性に差が出るという点も把握しておきたい点で、例えば機械的特性においても靭性が高い(柔らかい)材料であるほどプリント時のクセがあり、そのクセを把握して材料とモデルの形状に合った造形設定を行ってプリントを行うという点が、まさに3Dプリントを使いこなす上でのノウハウとなります。Formlabsではこの点で悩みをお持ちのお客様へのご相談窓口を設けています。個別相談ご希望のお客様は、以下よりご連絡ください。
押さえておくべき金属と樹脂の主な違い②
2つ目は、変形に関する違いです。一般的に、金属材料の変形には弾性変形と塑性変形があります。加わる荷重の大きさが弾性限界以下の弾性域内での変形であれば、荷重を取り除けば元の状態に戻ります。反対に弾性限界を超えた塑性域内での変形であれば、形状が元に戻らない塑性変形となります。わかりやすい例は、ボルトでしょう。ボルトは締め込むと、ねじ部のボルト軸が引き伸ばされます。引き伸ばす力が降伏点を超えるまでは元に戻ろうとする力が働くため、これが軸力と呼ばれる締結力になりますが、トルクをかけ過ぎる(過度に締め過ぎる)とボルトが降伏して(荷重が降伏点を超えて)しまい、ボルト軸の元に戻ろうとする力が失われ、締結力が消失してしまいます。
樹脂材料では、この塑性変形は起こりません。ゴムやシリコンなどの軟質材が最もイメージしやすいですが、樹脂材料は塑性変形できないため、曲げても引っ張っても破断しない限りは元の状態に戻ろうとする力が働きます。しかし樹脂材料の場合は粘弾性と言い、例えばPPやABSの薄板を折り畳むと元に戻ろうとする力は働いても完全に元の状態には戻らない場合もあります。この違いは、上で取り上げたねじ部など要素部品やその使用部位の設計など、幅広い箇所で関係してきます。ねじ部の場合は強度に懸念がある場合はインサートを使用する等の対策は可能ですが、試作品の場合はねじ部にこだわって全体の進行を遅らせる必要はないため、ねじでなくともピンやリベット等での暫定的な締結で事足りる場合も多くあるでしょう。
樹脂材料にも2種類ある
樹脂材料には、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2種類があり、この2種は全く異なります。3Dプリンタには7種類の造形方式がありますが、方式の違いによってこの2種のうちどちらの材料を使用するかも違ってきます。私たちの身の周りにある殆どのプラスチックは熱可塑性樹脂で、射出成形のペレットのように加熱することで溶けて液状になります。対照的に、熱硬化性樹脂は架橋結合という非常に強固な分子構造となっているため加熱しても分子の運動量が一定以上に大きくならず、液状に溶けてしまうことがありません。
3Dプリントでは、光造形方式とPolyJetやインクジェットとも呼ばれるマテリアル・ジェッティング(MJ)方式の2方式でこの熱硬化性樹脂の1種である光硬化性樹脂を使用します。光硬化性樹脂は液体で、レジンとも呼ばれ、紫外線(UV)光に反応して光重合という化学反応を起こして固化します。光造形とMJの2方式はこの光重合を利用して3Dプリントを行う方式で、他の5方式は熱可塑性樹脂を溶かすかレーザーで焼結する、あるいは凝固剤を併用して固めることでプリントを行います。そのため光硬化性樹脂を使用する光造形とマテリアル・ジェッティングでは、材料がABSライク、PPライク、あるいはゴムライクといった熱可塑性樹脂同等の機械的特性が発揮できるよう開発された相当材となります。
Formlabsでは、光造形3Dプリント用材料として他では得られない高機能な高強度材料やゴムライク材料、特許技術で実現した100%純シリコン材料などを提供し、そして小ロット量産に対応するSLS(粉末焼結積層造形)方式のFuseシリーズ用には高強度工業用ナイロン材や軟質材のTPUなど、高機能材料を提供しています。
「光造形の良いところは、中まで材料がしっかり詰まるところと、材料特性が優秀なところです。〇〇ライクと呼ばれますが、本当にそれに近い性質がしっかりあります。ゴムライクなんかは特に優秀で、インクジェットではこれほどのゴムのような質感は表現できません。」
西野 晃一氏 株式会社エポック社 シルバニア本部技術室 マネージャー
「光造形のForm 3では、Grey、Grey Pro、Tough 2000(ABSライク)、Rigid 10K(ガラス分高配合材)レジンでマネキンの手先などを作っています。マネキンよりも慎重な扱いが求められるサービスロボットの外装部品は、特に輸送中や倒れた時に破損しない高強度材料が必要です。その点SLSのFuse 1で使えるNylon 12は高強度ながらある程度の靭性があり、すごく破損しにくい材料です。」
西田 真人氏 吉忠マネキン株式会社 東京店 マネキン・モデリング部 事業企画部
幅広い用途に:スタンダードレジン


白・黒・グレーのモノトーン色レジン3種は機械的特性は同じだが、プリント時の特徴は異なる。他にも高速プリント用レジンや高靭性高耐久材料、自在にカラーリングが行えるものも。
Formlabsのスタンダードレジンには、7種のレジンがあります。これらスタンダードレジンは、他社製の汎用材料やFDM(FFF)で汎用材として一般的に提供されるPLA(ポリ乳酸)等よりも十分に高い強度があります。また、光造形という造形方式の特徴により、強度の異方性(荷重方向によって強度が変わること)がない点もFDMとの違いとなります。幅広く活用できるスタンダードレジンですが、各レジンごとに特徴があるため選定の際には以下情報を選定時の参考にご確認ください。
Greyレジン
光造形では材料色による光の吸収・反射もどこまでの精密表現が可能か等のパフォーマンスに影響します。GreyレジンはWhite、Black、Clear、Color Baseレジンと強度や靭性、耐熱などの材料特性は同じですが、他のレジンより精密表現や精緻な寸法精度を出したい場合におすすめします。
Blackレジン
やや光沢のある黒色であるため、陰影をはっきりと確認したい場合におすすめです。また、多くの製品での仕上げ時の質感に近い発色であり、特に外観にこだわる試作品や模型製作では人気のある材料です。White、Grey、Clear、Color Baseと強度や靭性、耐熱などの材料特性は同じで、精密表現度はGreyにやや分があります。
Whiteレジン
こちらはモノトーン3色の中ではプリント時のクセがあります。非常に微細な表現が必要なモデルではサポート材無しのビルドプラットフォーム上での直接プリントを行うより(デザインにより異なりますが)45~70℃の傾きでプリントすることをおすすめします。一方で塗装を施したい場合はそのまま塗装でき、最も扱いやすい材料です。
Clearレジン
光造形の特徴を活かした透明度の高い造形品が製作できますが、プリントしただけでは半透明の状態です。透明度を重視する場合、表面処理で透明度を向上できます。研磨での透明度向上とトップコートの併用が最も効果的ですが、研磨を避けたい場合は一般的なクリアラッカー等で2~3層のクリアコートを行えば、一切の研磨なしで筐体の内部機構が確認できるレベルの透明度は得られます。そうした試作が目的の場合は筐体にそれほど高い強度は必要ないケースも多いため、紫外線によって黄色がかってしまうのを避けるため、強度を出すことが主目的の二次硬化は行わず、洗浄後はクリアコートなどの表面処理に進みましょう。
Draftレジン
Formlabsの光造形用材料におけるトップセラーの一角で、他レジンと比べて最大4倍速でのプリントが行える高速造形材料です。紫外線に反応する成分を多く含むことで高速プリントを実現しますが、その分日光が当たる場所に置いた場合の劣化も早く進むため、2~3年以上の長期間使用するものを作る場合は他のレジンの方が良い選択肢となります(逆に言えば日光に当たらない環境であれば、多くの場合で1~2年程度なら大きな劣化はありません)。一方でDraftレジンは強度や精度も一定以上の水準で発揮できるため、高速で試作・検証サイクルを回したい場合は最高のソリューションです。使い方の詳細はサポートページをご覧ください。
Grey Proレジン
Greyレジンの精密表現度と寸法精度といったプリントのパフォーマンスを維持しつつも機械的特性(特に靭性と耐久性)を向上した材料で、クリープ耐性が高い点や、光硬化性樹脂でありながら耐光性が高いためプリント後の劣化に強く、中長期の使用にも対応できる点も特徴です。機能確認用試作や耐久性を要する治具製作、中長期で使用する模型や展示用途のモデル等におすすめします。詳細情報はサポートページをご覧ください。
高強度材料:Tough、Durable、Rigid


高強度材料のニーズは非常に多い。一方で、強度という言葉は非常に曖昧な言葉でもあり、材料選定時には硬さ(剛性)が必要なのか破断・破壊への強さ(靭性)が必要なのかは区別して考えることが必要。
材料選定の際に強度を考える場合、念頭に置くべきは強度という言葉は非常に曖昧な言葉で多彩な意味合いの強度を包括的に示す言葉であることを認識しましょう。例えばWikipediaで「強度」のページを見てみると、様々な意味合いでの強度が解説されています。そのため強度が重要な選定基準である場合は、材料選定の際に念頭に置くべき重要事項があります。
その重要事項とは、イメージしている「強度」が、例えば圧や荷重を受けても変形しないといった硬さ(剛性)を重視しているのか、あるいは衝撃や繰り返しの荷重を受けても壊れないといった耐久性(靭性)を、あるいは剛性と靭性のバランスを重視しているのかということです。意外にメーカーで設計に携わる方でもこの2つを混同して「強度」という言葉を使われるケースは多く、社内でも単に「高強度」という曖昧な表現が浸透しているケースも散見されます。部門内のメンバーが共通の目的を共有していたり、それを熟知する既存取引先とのコミュニケーションは問題なくとも、一歩外に出て新たな相手とコミュニケーションを取ったり材料選定の相談をする場合は、硬さと耐久性の違い、剛性と靭性のバランスはどの程度必要なのか等の「要件定義」を明確に行う必要があります。
Tough 1500レジン
ポリプロピレン(PP)同等の機械的特性を発揮できるよう開発されたTough 1500レジンは、PP同様にある程度の剛性はあるものの、靭性に優れた高耐久性材料です。製品名の「1500」はヤング率(引張と曲げの弾性率)の大まかな値を示しており、他のFormlabs製材料で名称に数値が入っている場合、高強度材料ではヤング率のおおよその数値とご理解ください。量産時にPPを使用する部品や、ばねをプリントして繰り返し使用することも可能です。また、一定の要件を満たした後処理を行えば皮膚接触に対応する生体適合性材料として使用できます。詳細はサポートページをご覧ください。
Tough 2000レジン
ABS同等の機械的特性を発揮できるよう開発されたTough 2000レジンは、日本国内でも最もよく使われている材料の一つです。ヤング率2GPaでありながら50%近い破断伸びを備え、割れにくく一定の硬さもバランス良く備えた高強度材料です。圧力や衝撃にも高い耐性がありますが、靭性が重要となる場合は荷重を受ける箇所の厚みなど設計面での配慮と材料特性を併せて考慮してください。他材料との比較を含めた詳細はサポートページをご覧ください。また、樹脂型のように高温環境下で圧を受けても変形しないという特性が必要な場合はRigidシリーズをおすすめします。
Durableレジン
ポリエチレン(PE)同等の機械的特性を発揮できるよう開発されたDurableレジンは、例えば洗剤のスプレーボトルのように圧をかけると凹み等の変形を起こしても即座に元の状態に戻る性質、そして摩擦係数の低い独特の触感が特徴です。ゴムライク材料と違い、ある程度の剛性がありながらも柔らかい材料をお求めの場合は是非ご検討ください。食品安全や生体適合性が不要な用途であれば、ガスケットやパッキンのような用途にも対応し、こちらも国内外で非常に多くの企業で活用されています。詳細はサポートページをご覧ください。また、BioMed Durableという生体適合性を備えたバージョンもご用意しています。
Rigid 4000レジン
Rigidシリーズのレジンは、ガラス充填によって剛性を強化した材料です。一般的に光造形方式の3Dプリントでは、剛性が高いほど微細表現に優れ、また突出形状(オーバーハング)でもサポート材なしでプリントできる度合が大きくなります。Rigid 4000はTough 2000の2倍程度のヤング率を備えた高剛性材料で、靭性を高水準に兼ね備えるToughシリーズ以上に微細形状の表現などプリントの自由度が高い材料です。また、他のレジンより耐光性にも優れています。一方で、高剛性材料であるため、特に薄肉形状では限界以上の衝撃や圧が加わると割れてしまいます。詳細はサポートページをご覧ください。
Rigid 10Kレジン
Rigid 4000よりも更にガラス充填率を上げた極高剛性材料です。ガラス分の高配合によって、圧や荷重を受けてもほぼ全く変形せず、極めて高い耐熱性も備えることから樹脂型・簡易型のプリントにも数多く採用されています。また、耐光性、耐薬品性にも優れており、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)並みの剛性と強度があることから、工業用途で多く選ばれる材料です。詳細はサポートページをご覧ください。
高い強度と他の特性を併せ持った材料
材料選定時に高強度が条件となるケースでは、強度の他にも耐熱性、耐薬品性などを兼ね備えた材料が求められるケースも多くあります。上で紹介したRigid 10Kレジンは、極めて高い剛性に耐熱性と耐薬品性、耐光性を備えた高機能材料の好例です。Formlabsでは、例えば以下のような材料もご用意しています。
- Flame Retardant(難燃性)レジン:FRレジンはUL 94のV-0認証を取得した難燃性材料で、当然ながら高い耐熱性も備えています。また、直接造形品にタップを切っても割れない強度を持ち、電子機器を中心とした機能確認用試作や難燃部品の小ロット量産で使用されています。サポートページはこちらです。
- ESDレジン:光造形では非常に珍しい、静電気散逸性(静電気拡散性とも)材料で、特に基板実装前のICチップトレイや電子部品の保管・運搬用品、治具や固定具などに使用され、静電気による損傷から電子部品を保護します。FDM(FFF)方式ではABS系の材料でESD材料が販売されていますが、FormlabsのESDレジンはABS系材料を超える強度を備え、電子部品製造工程のあらゆる治工具に採用されています。サポートページはこちらからご確認ください。













